Surgery 難症例に対する外科的根管治療
歯を内部から清掃する根管治療だけでは回復が見られないケースや、通常の処置自体が難しい症例には、外科的根管治療を検討します。
根管は弯曲していたり、細かく枝分かれしていたりと、形状が歯によってまちまちです。とくに複雑な構造をしている先端部などに問題が起こった場合には、外科的に適切に根管治療を行って、症状の改善を図ります。
外科的根管治療の成功率について
外科的根管治療は、歯冠部側から行う根管治療では難しい処置を、より精確に実施できるので、予後を良好に保てる可能性が高くなります。一般的に、通常の根管治療の成功率は約4〜8割と幅がありますが、外科的根管治療では約9割以上は経過が良いといわれています。
当院では通常の根管治療も外科的根管治療も、症状に適したより良い方法で実施し、症状を改善に導きます。
Cases 外科的根管治療を行うケース
歯根端切除術と逆根管充填で治療する場合
通常の根管治療では治すことが難しい、歯根の先端部(歯根端)の複雑な病変を取り除く方法です。歯肉を切り開いて剥がし、歯根端を切除します。 切った歯根端の側から、根管内部の形を整えて、薬剤と充填材を詰めます。通常とは逆の側からの充填なので、逆根管充填といいます。 緊密に充填できたことを確認できたら、歯肉を縫合します。
- ① 患部周辺の歯肉を切り開いて、歯根の先端部にある病変を剥き出しにします。
- ② 炎症を起こしている歯周組織を取り除き、複雑な歯根端の病変を切除します。
- ③ 切った歯根端から差し込める形状のレトロチップという器具で、根管治療を行います。
- ④ 切った歯根端から、充填材や薬剤を入れる逆根管充填を行います。
- ⑤ マイクロスコープで隙間なく詰められたか確認し、縫い閉じます。
術後6ヵ月で治癒しました。
意図的再植術で歯根端切除と逆根管充填を行う場合
口内で処置するのが難しい歯は、一度抜歯してから歯根端切除と逆根管充填を行い、元の位置に再植します。太い神経や血管が近くに通っていて解剖学的な問題がある場合(第二大臼歯など)や、根管治療をしたが治癒しなかった歯などが適応症例です。
再植できるよう、歯根に付着している歯根膜が乾燥しない間に処置しなければいけないため、専門的な技術が必要とされる治療法です。
- ① 患部は右の下顎の第二小臼歯で、歯根先端部のすぐ近くに太い神経管が存在していたため、意図的再植術を行うことにしました。
- ② 歯周組織にダメージを与えないよう、慎重に抜歯します。
- ③ 歯根端の病変部を切除します。
- ④ 染色液を切断面に塗り、汚染組織が残っていないか、破折などの異常がないかをよく確認します。
- ⑤ 歯根端から根管治療を行います。歯の内部を清掃・殺菌し、逆根管充填の処置をします。
- ⑥ 逆根管充填後の歯根端の断面です。歯根が乾燥しないうちに速やかに再植します。
外科的根管治療は歯を残すために有効な手段です
専門的な技術をもってしても、通常の根管治療では回復させられないケースがどうしても存在します。これは歯の位置や形状、状態などが影響しているためです。根管はもともと非常に複雑な構造をしているため、確実に100%改善できるといえる治療は不可能です。
通常の根管治療だと難しいケースでは、できるだけ歯を残すために、外科的根管治療を行います。歯を抜いて隈なく確認できる状態で処置するので、徹底的に汚染組織を除去でき、小さなひびも見逃すことなく補修して、細菌が入り込む余地がないよう緊密に根管充填できます。
「人生100年時代」といわれるようになり、患者さまからもできるだけご自身の歯で長く過ごしたいという希望が聞かれるようになりました。外科的根管治療は、こうしたニーズにこたえられる歯科医療技術です。天然歯の寿命を延ばし、生活の質を支えられる歯を維持します。
当院で治療を担当する歯科医師は、外科的根管治療に関する論文を手がけ、講演活動にも取り組んでいます。さまざまな経験に裏打ちされた良質な技術を、患者さまの治療にいかします。
・機能性を重視する場合は自費(保険適用外)での診療となり、保険診療よりも高額になります。
・再度根管治療を行っても、予後が悪くなってしまうことがあります。このような場合は、外科的な治療で対応することがあります。
・基本的には自費(保険適用外)での診療となり、保険診療よりも高額になります。
・手術後、歯肉・顎などの炎症・疼痛・腫れ、組織治癒の遅延などが現れることがあります。